任意後見については以前、説明しましたがやはり経験してみなければ解らないこともたくさんあるかと思います。
今回はある事例を参考にお話してみましょう。
ご本人は現在70歳、永年連れ添ったその夫は昨年、10年に渡る自宅療養のあと、亡くなられました。
その方は、ずーっと自宅で夫の介護をしてきました。もちろん地域の福祉の担当の方たちにいろいろ教えていただき、デイサービスや、訪問介護を活用しながら夫を看てきました。
最愛の夫をしっかり看取ったあと、「さあこれから、今まで出来なかったことも何でも出来るわ」と、その方は思われました。
でも、その方は最近、すこしばかり不安です。
子供たちは、全員成人して遠くで暮らしています。心配をして、一緒に住まないかと言ってくれています。しかし慣れない土地に行きたくはない。
住み慣れた、そして最愛の夫との思い出のある自らの家で、暮らしたいと思っています。
ただ、「もし、私が動けなくなったらどうしよう・・・」と不安は募ります。もちろんお隣の方や、福祉の方たちはいらっしゃいます。
でも、自分のお金の管理や、病院への支払いなど、「私が認知症にでもなったら誰がやってくれるかしら。遠くの子供たちには迷惑はかけたくないし・・・」と気が塞いでしまいます。
そんな時その方は、テレビで、任意後見制度のことを見ました。
早速社会福祉士の方に来ていただき、お話を伺ったとのことです。
任意後見をお願いする人は、その方の親族でも信頼の置ける友人でもなれるそうですが、ご本人は身内・親戚や知り合いに気を使うのはいやなので、専門家の社会福祉士さんにお願いすることにしたとのこと。
以上が、最近の実例の一つです。
※※※ 任意後見契約には、将来のご本人の不利な契約を取り消す「取り消し権」がないことに留意!※※※
成年後見制度とは、精神的能力・判断能力が衰えた場合に、様々な契約おいて、不利な契約を結んでしまわないように、その人に合った安全な契約ができるように、その方の支援をしてくれる人を定め、その方を支えるというもので、そうした方々を支える人を「後見人」といい、ご本人と一緒に契約に問題がないかを判断したり、間違って結んでしまった契約を取り消したり、その方の代わりに契約を行ったりします。
成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度の二つの制度があります。
任意後見契約の手続きは、将来、ご本人の代わりに、やって欲しいことをすべて文章にして、公証役場にて公証人の立会いのもと、記名、捺印をして契約します。この場合、任意後見契約は、代理権のみで、取り消し権はありません。
そこは特に留意してください。
なぜなら、認知症が進んでその方が不利益な契約を結んでしまった場合は、任意後見契約だけでは、取り消すことができません。(任意後見人が、いち早く気がつけば、クーリングオフは使えます。)
不利益な契約から時間がたっていたときなど、どうしても取り消し権を行使しなければならないときは、任意後見受任者か任意後見監督人が、自らその方の法定成年後見の申立をすることができます。
申立をした時点で、任意後見は終了し、取り消し権のある法定成年後見契約へと移っていきます。
判断能力が不十分な方、将来においての判断能力が不十分になったときに、あなたの暮らしと財産を守るために、さまざまな知恵を活用する法的な制度が日本にはあります。
困ったときは、ソーシャルワーカーでぐちのりこ事務所に、遠慮なく、本当にお気軽に、ご相談くださいね。